最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)1826号 判決
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人丸尾美義、同高野源進の上告趣意第一点について。
論旨(一)に引用する大審院判決のあることは所論のとおりである。しかし右の判決は罰金刑のみを科した場合に関するものであって、本件のように懲役刑と罰金刑とを併科した場合に関するものではない。懲役刑と罰金刑とを併科した場合に関しては別に大審院判決がある(昭和一五年(れ)五〇四号同年七月二四日大審第三刑事部判決)。その判決によると、一個の主文において懲役刑と罰金刑とを併科する併科刑の軽重については常に先ず重き懲役刑の軽重を比較し、その軽重に従い該科刑の軽重を定むべく、これが軽重なき場合始めて罰金刑の軽重を比較しこれにより併科刑の軽重を定むべきものであって、旧刑訴四〇三条における科刑の軽重も亦この見地において比較商量すべき筋合であると判示しているのである。
ところで本件において、第一審判決は被告人を懲役三年及び罰金三〇万円(罰金不完納の場合における労役場留置期間の言渡を遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は被告人を懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円(罰金不完納の場合に金一〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処したのであるから、原控訴審判決は少しも前記大審院判決に反するものではなく、また論旨引用その他の判決と相反する判断を下したものではない。それゆえ、論旨は理由がない。
第二点及び第三点について。
論旨は、いずれも刑訴四〇五条に定める事由に当らず、また本件については刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。
よって、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官の全員一致した意見により主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保)